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「あ…その……ごめんね…?」
僕の視線に気付いたラキが、俯きながら言った。
「…いや、気にしないで…!」
僕はなんだか焦っていた。
そんな僕をラキは見て、
「…優しいんだね、ハッドは。」
と、言った。
嬉しそうな、悲しそうな、そんな笑顔を僕に向けて。
僕はその笑顔に返す言葉を見つけられなかった。
少しの沈黙。
数分、経っただろうか。
いや、1分も経っていないのかもしれない。
沈黙を破るのはいつもラキだ。
「ねぇ、そこの本棚の本、読んでもいい?」
彼女は部屋の隅の本棚を指差して、言った。
あれは、セバスチャンの本棚だ。
「うん、どうぞ…。」
彼女はそれを聞いて、椅子からひょいっと立ち上がり、本棚の方へ行った。
数冊、ペラペラと中身を見た後、一冊だけ持って椅子に座った。
「本、読むの好きなの?」
僕が彼女に話しかけたのは初めてかもしれない。
「まぁまぁ…好きよ。」
曖昧な返事。
なのに、そんなに読んでみたくなる本があったのだろうか。
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