魔王さんの煩い

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僕はキッチンに食器を運び終え、大きなトレーに食器を移した。 このトレーは中々の大きさがある。 重ねれば二人分の食器がすべて乗るくらいには大きい。   僕は食器が乗ったトレーを持って外に出た。 辺りは暗くなり、月が地を照らしている。   小屋を出てすぐの井戸の側、そこに低い台があり、その上にトレーを置いた。   井戸から水を汲み、僕はしゃがんで食器を洗い出した。 夜は少し寒く、触れる水は冷たく両手を撫でる。 カチャカチャと音をたてて僕は一枚一枚丁寧に食器を水で洗う。     今日は久しぶりに人と話した。 少し、緊張したなぁ… 久しぶりだったし、相手は女の子だった。 うまく話せていただろうか? 少し声が小さかったかもしれない。   桶の水に写る僕は、少しだけ笑っている。 嬉しかった。 久しぶりに話せて。     ……ラキはこれからどうするつもりなのだろうか。 彼女の旅は終わっていない。 明日にでもここを出ていくだろうか? なら、数日分の食料を渡してあげないと。 あと…本を、あげようかな… セバスチャンの物だけど、小屋にただ置いてあるよりも誰かに読んでもらった方がいいだろう。 それから…   また、僕は独りに戻るのか… ラキも独りで見つからない魔王を探す旅を続けるのだろうか…   桶の中にいる僕は、沈んだ表情をしていた。
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