魔王さんの煩い

16/24
前へ
/67ページ
次へ
「はぁ…」   自然に溜め息が零れてしまった。     「ハーッドっ!」   急に後ろから声がして、肩に手をかけられた。 びくり、と背が振動したのは言うまでもない。 声の主は、当然ラキだ。   「どしたの?溜め息なんてついちゃってさ?」   振り向くと、前屈みになったラキの顔がすぐ傍にあった。   「いやっ!…なんでもないよ…。」   僕は振り向いた頭を素早く前に戻しながら言った。 食器洗いに戻る。 もう洗っていない食器は少ない。   「あ、手伝うよ!」   彼女は食器に手を伸ばした。   「いいよっ!、あと少しだし僕一人でやるから…」   水が冷たいから。 僕は食器を洗うスピードを速めた。 一気にラストスパートをかける。   「手伝いたいの。それに水、冷たいでしょ?」   ラキは食器を手にとった。   「冷たいからいいよ!。あ、そっち洗った食器だし…」   僕は言い終わると同時に最後の食器を洗い終わった。   「あ…。 ごめん、後片付けまでが夕食なのに手伝わなくて…。」   「いや、いいんだって。」   僕はなぜか焦り気味に言った。   洗い終わった食器を乗せたトレーを持って、立ち上がった。 ラキと向かい合う形をとって気付いた。 彼女の腰のベルトから、剣が2本さげられていた。   「あ、剣の稽古しようかと思ってね。」   ラキが僕の視線に気付いて、言った。   「私の剣の腕前、見てみる?」   ラキは笑顔で言った。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

541人が本棚に入れています
本棚に追加