魔王さんの煩い

19/24
前へ
/67ページ
次へ
風が、吹いた。   自然に吹いた風だろうが、きっとラキが吹かせたのだ。 そう思わせるには充分な雰囲気だった。   「………ふぅ…。」   ラキは少しだけ上がった息を整えて、両手の剣を下ろした。   彼女は二本の剣を腰の太いベルトに掛けて、こちらへ歩き寄った。   「…ねぇ、どうだった?」   僕は土の上に座っていたから、ラキの顔を見上げる。   「なんていうか…綺麗だったよ。」   剣の腕前の感想を述べる場にはあまり相応しくない言葉。 しかし、正直な感想だった。   「綺麗…かぁ…。うん、ありがと。」   彼女は目を細めた。 微笑んでいるようにも、 どこか悲しそうにも見える儚げな表情。   僕はどこか胸騒ぎを感じた。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

541人が本棚に入れています
本棚に追加