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風が、吹いた。
自然に吹いた風だろうが、きっとラキが吹かせたのだ。
そう思わせるには充分な雰囲気だった。
「………ふぅ…。」
ラキは少しだけ上がった息を整えて、両手の剣を下ろした。
彼女は二本の剣を腰の太いベルトに掛けて、こちらへ歩き寄った。
「…ねぇ、どうだった?」
僕は土の上に座っていたから、ラキの顔を見上げる。
「なんていうか…綺麗だったよ。」
剣の腕前の感想を述べる場にはあまり相応しくない言葉。
しかし、正直な感想だった。
「綺麗…かぁ…。うん、ありがと。」
彼女は目を細めた。
微笑んでいるようにも、
どこか悲しそうにも見える儚げな表情。
僕はどこか胸騒ぎを感じた。
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