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「否定…しないのね…。」
彼女はとても悲しそうに言った。
なぜ悲しそうな顔をするのだろうか。
長い間探していた僕を見つけられたのに。
僕もただ、悲しかった。
久しぶりに人に会えたのに。
久しぶりに人と話せたのに。
なのに、僕が魔王だったから。
もし、僕が魔王じゃなければ。
そう思ったのは初めてじゃない。
寂しくなる度に思ってきた事だ。
しかし、自分が魔王であることをこんなにも呪ったのは初めての事だった。
僕が魔王だとバレる。
想定していなかったわけでは無いだろう?
自分自身に言う。
そうしないと僕を保つ自信がなかったから。
こうなって欲しくは無かった。
しかし、もうなってしまったのだ。
「どうして…僕が魔王だって分かったんだ…?」
僕は彼女から目をそらして俯く事で、言葉を発する事ができた。
「―――写真…。」
聞き逃してしまいそうな程小さな声。
「……写真ってね…、今の人間の文化では最近作られた物なの…。
でも魔族の文化ではもう千年以上前から、『魔法具』として存在した。
考古学の進歩で、やっと人間にも作れたのよ?
それなのに…。
しかも、あの部屋に飾られてる写真には…色がついてた。
それに、魔法具で撮られた写真って数十年くらいでは褪せないの。
ねぇ、あの写真は……何百年前の写真なの?」
彼女は俯きながら、一気に早口で言った。
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