541人が本棚に入れています
本棚に追加
「さてと…」
僕は毎朝、お墓に行く。
と言っても、小屋のわきにそれはある。
毎朝、僕はこのお墓の前で手を合わせる。
ここに眠るのは、昔僕と住んでいた人。
彼がいたから、今の僕はいる。
彼が見守ってくれるから、今の僕であれる。
でもやっぱり少し寂しい。
お墓に行ったその足で井戸から水を汲んで、小屋へ帰った。
さて…と…
今日は誰かが来るかもしれない。
おもてなしの準備をしなきゃ。
僕は年に二度の贈り物の袋を開いてみた。
中にはおもてなしに使えそうな物もある。
「うー…ん…、よし、パイでも作るかー。」
独り言。なんか寂しい。
この小屋キッチンは小さいわりに設備は整っている。
オーブンもある。
今はもういない人が料理好きだったから。
パイの材料は一通りある。
林檎もまだある。
よし、パイでも作り始めるか。
今回は口に出さなかった。
また寂しくなってしまうから。
兔なら死ぬ程の寂しさ。
まだ慣れられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!