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夕暮れの学校。
珠紀は席に座りぼーっと、夕陽を見ていた。
授業が終わったら教室で待ってろ、と真弘に言われたのだ。
だが、授業が終わって数時間経った今も真弘が来る様子はない。
「先帰っちゃおうかなー…」
珠紀はため息をひとつつくと、席を立った。
すると、それと同時に廊下からバタバタと走る音が聞こえてきた。
「珠紀!」
部屋の扉が勢いよく開けられた。
珠紀は驚き目を丸くし、真弘を見た。
「悪い、遅くなった」
「何してたんですか?」
珠紀は真弘が来てくれたことを嬉しく思ったが、少し困らせてやろうと文句を言い始めた。
「あ、いや…ちょっといろいろあってな…」
真弘は少し焦ったようにそう告げる。
珠紀は真弘の態度にカチンときたのか不満そうに頬を膨らました。
「とにかく!暗くなるから帰るぞ」
真弘は珠紀の手を握り教室を出ようとする。
珠紀は動こうとしなかった。
真弘は珠紀が動かなかった為、つんのめってしまった。
「な、なんだよ…」
「遅くなった理由、教えてください…」
真弘は少し考えたあと、照れくさそうに口を開いた。
「今日…何の日か知ってるか?」
「今日?6月28日…?」
珠紀は日付を口にした途端はっとする。
「その…誕生日、おめでとう…」
真弘はポケットからキレイにラッピングされた小包を珠紀に渡す。
「これ…私に?」
小包を受け取ると珠紀は嬉しそうに微笑み真弘見た。
「開けてみろよ…」
珠紀は言われたとおり小包を開けた。
すると、中からは指輪が出てきた。
「これ…」
「まだちゃんとしたのは買ってあげれねぇから、今は安物しか用意できねぇ…でも、いつかちゃんとした指輪買ってやるから」
真剣な眼差しで真弘は珠紀に告げる。
珠紀は嬉しさの余り目に涙を浮かべた。
「真弘先輩…ありがとうございます。…これ、はめてくれませんか?」
珠紀は真弘に指輪を手渡し、はめるように促した。
真弘は顔を赤くし珠紀から指輪を受け取ると、左手の薬指にはめる。
珠紀ははめてもらった指輪を見てにこっと微笑んだ。
「ほら、帰るぞ」
「はい!」
真弘は顔を赤くし珠紀は嬉しそうに家に帰って行った。
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