月下狂想

1/34
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ

月下狂想

「――だから言ったのに」 寂しそうに君は嘆く。 「どうして忠告を守らなかったの」 それは独り言のような謳(うた)。 彼女の瞳は今にも虚ろに 泣き出しそうだった。 ひゅっ、と 切っ先が鳴く。 「どうして」 首に添えられた刃物の鋭さは、焼けるように痛い。 「ねぇ、どうして」 ――降りしきる雨の中で。 俺には答える事ができなかった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!