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◇
「君の願いを叶えてあげよう」
星屑すらない夜の中で、悪魔の声はシンと浸透した。
暗示めいた言葉の余韻は、疑う事を許さない
沈黙の圧力。
「君の願いは?」
迫り来る言葉の魔術。
夢現(ゆめうつつ)の意識の中で、
僕はその悪魔の誘いに乗ってしまった。
「男らしくて良い願いだ」
――取引に代償がある事すら知らずに
「叶えよう。だが、これから君は――――」
(3)
「沢村くん。昼休み、少しいいかしら?」
昨日の出来事の中を未だに彷徨っている俺を現実へと引き戻したのは、
朝霧のそんな一言だった。
今朝、気が付けば自分のベッドで眠っていて、
あれからどうなったのかよくわからない。
夢だったのか
現実だったのかと言えば、
現実なのだろう。
でなければ朝霧が話しかけてくる事はまずないのだから。
「……いいけど」
クラス中がざわめいているのがわかるが、
朝霧はそんな事を微塵も気にしてなどいないようだった。
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