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「それって……」
人間の身体を食べ尽くすから。
何とも不気味な言葉が弁当箱の上を漂う。
「言葉通りよ? 証拠が残っていないのは、犯人が骨まで食べてしまうから」
朝霧は俺の目を見てしれっと話す。
呆気にとられているうちに彼女は席を立っていて、扉に手をかけていた。
「そうだ、沢村くん」
振り返り俺を見るゾッとする程に冷たい朝霧の視線。
「夜の私には近付かない方がいいわよ。きっと貴方は殺されるから」
そう言って去っていく背中を、
引き止める事なんてできなかった。
今のは脅しではなく警告や忠告の類だった。
でも、その言葉に違和感を覚えたのは何故だろう?
疑問は降り積もるばかりだ。
教室に戻ると羨望の眼差しが向けられた。
その容姿から朝霧の人気はあれでもかなり根強い。
尤も、返り討ちにあう事はわかっているので誰も近付こうとはしないのだが、
あわよくばと願う男子は多々いるのだ。
そうやって冷静に考えてみると、これは羨望の眼差しではない気がしてきた。
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