月下狂想

19/34
前へ
/34ページ
次へ
案の定、やたらと背中を強く叩いてくるクラスメートが四人いて、 そのうちの一人は悪意の塊そのものだったと思う。 そんな中でも朝霧は他人事のように窓の外を眺めているのだから、恐れ入る。 ――だって貴方誰にでも優しいじゃない。 朝霧の言葉が胸に刺さったままで、午後の授業は上の空だった。 ちょこちょこと対角線の向こうに座る朝霧を見たが、彼女が黒板に視線を送る事はなく、 それどころか机の上に教科書すらだしていなかった。 「何だ? その顔は」 厚顔な先輩は勿論ミコさんで、俺の顔にケチをつけてきた。 「顔に文句を言われても困りますね」 良くて中の上、悪いと中の下といった俺の顔は、 存在感の薄い醤油顔という奴らしい。 大してモテた経験はないが告白は数度あるといった感じの、 平凡より少しだけ恵まれている感じの高校生活です。 はい。 「そうじゃなくて、考え事しているのが丸出し」 「ああ、そうですか? まあ色々とありまして」 「朝霧巴か」 一呼吸もおかずにつっこんでくる辺り、 この人は確実に知っていたのだと思う。 本当……敵が多い理由がよくわかる気がする。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加