月下狂想

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「随分と愉しそうですね」 愉快にほくそ笑むミコさんは飴玉を舐めて真顔を作る。 作るという表現はおかしいのだけど、 飴玉を舐めた瞬間に真面目な顔をするのだから、 変身もしくは作るといった表現しか思い浮かばない。 「大変だったんだぞ、昨日は」 寒気のする事を平然と言ってのけるミコさんに、疑問符しか浮かばない。 「昨日というよりは今日か。感謝しなさい」 「感謝?」 もう何となく予想はついたけど、それでもミコさんの口から直接聞かなければ気が済まない。 「倒れただろう? この私がおんぶしてやったんだぞ」 どの私が? というツッコミは置いといて、 「ハメましたね?」 「しかし、朝霧巴が犯人じゃないとはな。ヤツから聞いたか? 昼休み一緒に過ごしてたらしいけど」 この人は……全部知っていた訳か。 背景の秋雨がこれほど似合わない人間は、この学校でミコさんくらいだろう。 ミコさんにはもっと激しい雨が似合う。 雷光を伴う嵐のような雨がきっといいだろう。 「聞いた、というのは?」 「だから殺人事件の犯人だよ」
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