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それからというもの私が抱いていた危惧は恐怖になり、私を蝕んだ。
遥のあのイニシャル入りの赤い革表紙は開くことはもちろん視界に入れることさえできなくなった。
しかしそれでも遥といる時間は唯一、私が私でいられる気がした。
……もはや捨て去ることなぞできない。………
私は思い悩んだ末、一つの決断に辿り着いた。
二つあるうちの因子を一つ取り除けばよい。"日記"は?
もはや触れるのも嫌だ。
またそこにあの忌まわしい起るであろう事実が記載されていないとも限らない。
では消去法であの金庫だ。
遥が居ない時に今度は何度でも開くまでダイアルを回し続ければよい。
そうすれば恐れるべきは、"日記"のみだ。
…そうだ。
"日記"だけならば思い過ごしかもしれない、実際に後で読むと内容は変わっているのだから。
そう己に暗示をかけながら私は遥の部屋に居る際、ごく自然に一人になれる時を待った。
それは意外と早くにやって来た。
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