第九章 ただ愛する君のために

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時変者の来襲、それは間違いなく、現実世界の破滅を齎すものだろう。 かつての大洪水、あの災厄の再来であることは容易に想像が付く。 それどころか、被害はさらに広がるだろう。 異能から遠ざかった現代、科学が進歩したのは確かに進化と言えるだろう。 祈祷によって雨や風を呼び、大自然と共に生きていた時代はかつてのもの。 科学的観点から見れば、人類は目覚ましい進歩を遂げている。 しかし、非科学的観点から見てしまえば、急速な勢いで退化しているのだ。 ならば、被害はさらに増えるだろう。 世界人口も増えた。身を護る術もない。おそらく、人類は壊滅するだろう。 《どうしようもないのかしら……》 「少なくとも、時変者がこちら側に来るという事実は変えられないわね。今頃は、戦力を増やしてるはずよ」 そして、最大戦力で現実世界を改変する。 もはや完全に敗北が決定するまであと数歩となっていた。 「少なく見積もって一月、それでこの世界は改変される」 それは、今のままでは覆らない。 今のままでは虚無の主どころか、レラジェに触れることすらできない。 無力な自分が、今はただ惨めに見えた。
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