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そんな由真の憂いを考慮する余裕もなく、二人はこの通路の最深部に到達した。
その空間は、地下深くだからという事実をもってしてもなお通常以上の肌寒さを感じた。
最深部の中心には、由真の身の丈など簡単に越えるほどの巨大な石版が佇んでいて、その周りには鮮やかな装飾が幾重にも散りばめられている。
「やぁ、来たね」
その前に立っていたのは、空の姿をしたレイン=シリウスだった。
笑顔を振りまきながらレインは由真とルーシアの方を向き、
「ここが先人たちの眠る慰霊碑だよ。もっとも、遺品遺物なんて何もないし、ただ名前が刻まれてるだけなんだけどね」
よく見ると、巨大な石版には細かく文字が彫られていた。生憎由真の距離からは詳細が分からないが、レインの話を聞く限り、亡くなった英雄の名が刻まれているのだろう。
「ここなら長期に渡る没入も付加される力で賄えるし、回復の早さも段違いだろう」
「えぇ、私たちにとっても好都合だし。もっとも、そうなればの話だけど」
「大丈夫、僕たちの覚悟は決まったんだから、後は彼らを信じるだけだよ」
「……そうね」
どことなく、由真はルーシアの声に憂いを感じた。
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