第九章 ただ愛する君のために

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「それじゃあ、ルーシア」 「えぇ、今開くわ」 レインとルーシアの会話により、空間に威圧感を覚えた。 そして次の瞬間、記憶の海が発動した。 「由真、今からあなたと私で戦闘を行う。その原理は今更説明するまでもないわね」 記憶の海が発動した瞬間に、何をするのかは大凡理解できた。 しかし、これ以前にルーシアが言っていた、ルーシアを越えるという話については、未だに無謀に思えている。 虚無の世界に行く前にルーシアと同じように戦ったが、あの時は手も足も出なかった。 言ってしまえば、ルーシアのお情けで今このような状況に至っているに過ぎない。 戦闘のセンスや経験、あらゆる面で劣っている由真が、ルーシアに勝つなど、奇跡でも起こらない限り不可能。普段あきらめの悪い由真ですらそう思ってしまうほど、由真とルーシアの力量差は開いていた。 「由真、確かに今のあなたではゼロはおろか、レラジェに傷を負わせることも難しい。あの状態の天野紗希の力をもってようやく通常時のレラジェと均衡するくらい。長の力を全て使用してようやく凌駕する。はっきり言えば絶望的ね」 悔しいが、事実である。策など、簡単には浮かばない。
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