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「雪……どうしたんだよ。」
「俺は、………スペシャルクラスの奴らが大嫌いなんだ。」
「それは、同意見だな。………こちらも、一般の連中は好いてはいないのだよ。」
「………………。」
そして、そんな雪に何の臆面も無く、里伊田はそう言って、更に雪を挑発する。
明らかな挑発を知って、雪はいっそ頭が冷めたようだった。
「…………出ていけ。顔も見たくない。」
「助けてやった人間に対する言葉かね?それが。少しは礼儀と言うものを習いたまえ。」
「それはこっちの台詞だ。」
「……………。」
激しく反射をしている里伊田の眼鏡の奥に、どんな表情があるのか、俺には分からなかった。
けれど、多分雪と同じような表情をしているんだろうな……と思う。
そんな事を思っていた時、その場をとっくに去ってしまったかと思っていた、ゴミ箱の人が。そろぉり、と中を覗いて来る。
「それでは、………化け物君、お大事にしてくれたまえ。」
「あ、はぁ…。」
それも挑発だったのだろうけれど、雪は一瞬だけ眉をぴくっと動かしただけで、それ以上は何の反応もしなかった。
里伊田たちがそこから遠ざかる足音が聞こえて、俺はそれを扉を少しだけ開けて確認する。
「いない。」
「そう、か。」
ふぅぅ、っと息を一気に吐いて、雪はその場に座り込んだ。
「雪………。」
どうしてそんなにスペシャルクラスの連中を嫌っているんだ?
そう聞こうとして俺は止めた。それは俺が聞く事じゃない。
その時、ドアをこんこんと控えめに叩く音がして、「千夏です。」という声が聞こえてきた。
「………あ、千夏ちゃん。」
「うん、そうだな。…………よっし。早く朝御飯を食べに行こう。」
「あ、うん。」
立ち直ったはずは無いのだけれど、雪は空元気を振り回して立ち上がった。
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