~一章~

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 六月にあった定期考査を終え、しばらくは勉強の憂いを抱くこともなく過ごすことが出来る今月は七月。日付まで言えば、七日。  つまりは、七夕で俺の十六才の誕生日だ。  まあ、だからと言ってなーんも世界は変わらない。変わるわけがない。俺としては変わってほしいんだがな。  ☆ ☆ ☆   いつものように寝ぼけ眼を擦りながら、俺はベッドから這い出て一階に降りようと部屋を出る。  うだるような暑い日々がここのところ続いているが、それを忘れるくらい我が家は清涼な空気で包まれており、ひんやりと冷たい木目の廊下が気持ちいい。  それにしても、何か身体が変だ。肩が重いっつーか……、違和感がありまくり。  小首を傾げながらも足をだらだらと動かし、階段を降りるために足元に目をやって、 「ギャ――――ッ!!」  驚きから叫びを上げて足を踏み外し、踊り場まで転げ落ちた。壁に背中を打って息が詰まったが、今は措いておく。  俺は痛む身体を我慢して残りの階段を駆け下りて風呂場に向かった。ドタバタ騒がしくな。  普通の家庭なら親から「うるさいっ!」と言われそうなくらいだが、あいにく俺んちは普通じゃない。両親ともに、高名な考古学者であり、両名とも現在はエジプトに調査に行っている。
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