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森を、一台のマギアークが走っていた。
先ほどから、湿った土と冬を越えて伸び始めた草と、何本もの巨木、そして太陽。それ以外のものは見えない。
マギアークに乗っている青年は巨木にぶつからないようにチラチラと前をみながら時折、片手に持った地図とコンパスを見ている。
「まだかなぁ」
彼の右腕に巻き付いている白蛇が言った。
「そのセリフ、97回目ですね」
彼は答えた。
「……………」
「……………」
そして二人とも黙った。
運転手は黒いコートを着て、風になびく銀の長髪を押さえるかのようにゴーグルをしている。
その下の表情は若く、十代半ばほど。
銀色の切れ長の目を持つクールな印象を持たせるその顔は、見れば十人中十人が振り返る程美しい。
しばらくして、太陽が高いところに昇り、マギアークの影を真横に延ばした。
「そういえば、次の町ってどんなところなの?」
ふいにメギアがたずねた。
「ん~、噂で聞いただけですが…あの村には差別…というか、外から来たものに冷たいらしいですね」
「ふ~ん、差別かぁ
なんだかいやだね」
「そうですね」
「…………それにしてもまだつかないのかなぁ」
どこまでも続く巨木の集まりを見ながら言う。
「そのセリフ98………」
ジクスの言葉が途中でとぎれた。
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