プロローグ

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街にはイルミネーションの明かりが瞬いている。 周りには手を繋いだり、腕を組んだりしているカップルがいっぱい。 私の隣にも大切な人がいる。 いっぱいの優しさで私を包んでくれる優哉(ユウヤ)。 私は彼と2週間後に結婚を控えてた。 今日はウェデングドレスを選びに行く予定だった。 「どんなのがいいかなぁ…」 「柚子(ユズ)ならなんでも似合うよ」 「それ…さっきも言ってたぁ。それじゃ決まらないよ」 膨れた私の顔を見てクスクス笑う優哉。 私はその顔が大好き。 他愛もない話をしながら、私達はドレスを見る予定のホテルの前に来た。 交差点が赤信号だったために優哉と立ち止まる。 その時だった… 交差点の向こうに見知った顔が立っていた。 目の前が真っ白になった。 そこにある顔は私が18の時にいきなり消えたアイツに似てる。 向こうはこっちに気付いていないようで、隣には綺麗な女性を連れていた。 腕を組んでいるので恋人なのかもしれない。 私は何がなんだか分からないまま呆然と立っていた。 「…ず…柚子?」 「え?」 優哉の声に気付いたとき信号は青になっていて、大勢の人が行き交っていた。 「どうかした?」 「ごめん。ぼーっとしてた…行こう」 「ああ…」 私はきっと変な雰囲気を出していたかもしれない。 優哉は戸惑った声をあげてた。 ただ、私は正面にいるアイツから目をそらすことができなかった。 そうして歩いているとアイツと目があった。 みるみる目が見開かれていく。 その反応に確信を持った。 でも声をかけることができなかった。 それは優哉が近くにいたからかもしれない。 ただここで声をかけたら、いけないような気がしていた。 どうして… どうしてあなたは私の心をザワつかせるの? 緩やかだった私の心は、大きな波音を立て始めていた。
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