戸惑い

4/7
前へ
/20ページ
次へ
掃除を終えて時計を見ると、出勤までにまだ時間があった。 私は何を思ったのか、高校の時のアルバムを見ようと段ボールから取り出した。 ページを捲る。 そこには、まだ幼さの残る私や友達の姿がある。 そしてどの写真にも私の隣には、アイツの姿があった。 『白木 空(シロキ ソラ)』 その名前の空のように自由な人だった。 大きくて広くて何だかどんどん先に進んで行く人。 高校で初めて空に会ったときは、なんて光ってる人なんだろうと思った。 どんな時でも明るくて、クラスのムードメーカー。 まさか自分がそんな人と付き合えるなんて思ってもいなかった。 なんの取り柄もないような私が、空に告白されるなんて考えもしてなかった。 幸せだと思えた日々。 あの日が来るまでの2年半は、ケンカもしたけど幸せでお互いの存在が不可欠だと想ってた。 辛い日々が来るなんて、予想もしていなかった。 でも… もし、あの日がなかったら… 私の隣には今も空がいたのかな? 優哉じゃなくて…空が… 私はハッとして首を振った。 ―何を考えてる!?私には今優哉がいる!なのに!― こんなことを考えている私が嫌になる。 どんなときも支えてくれた優哉がいるのに…。 空の姿を見たからなの? 私は考えるのをやめるようにもう一度首を振ってから、アルバムをしまい仕事に向かうことにした。 空 どうして今になって… 忘れたはずなのに… 全て忘れて優哉と歩んでいくって決めていたのに どうしてあなたは現れるの? 忘れたはずなのに… 私の胸にあなたの爪痕が残っていたなんて。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加