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「……柚子…」
「…どう…して」
空は呆然とした顔をしている。
私も負けずに同じような顔をしていたと思う。
一瞬、時が止まったような気がしてた。
「…ぁ…」
「お兄ちゃん!!」
空が何かを言おうとした時、未来ちゃんの声が割って入った。
空は私から目線をずらして未来ちゃんに笑顔を向ける。
昔と変わらない笑顔がそこにはあった。
雰囲気は大人びたが、笑顔は変わっていない。
「…お兄ちゃん?」
「…俺の妹なんだ。義理のだけど…」
私の呟くような疑問に空は気まずそうに答えた。
お互い何だか気まずい雰囲気が漂う。
「そっ…そうなんですか。未来ちゃんのお兄さんでしたか。初めまして、木元柚子です。これから担当になりますので、よろしくお願いします。…それでは…」
私は咄嗟に他人のフリをしてしまった。
未来ちゃんとかに色々聞かれるのも嫌だったし、何よりも空の前に立っているのが嫌だった。
後ろで微かに空の戸惑いの声が上がっていたのが聞こえた。
それでも私は速くその場から、空の姿の見えない所までいなくなりたいと思った。
私はその場から逃げるように平然を装いながらも、足は速く前に進んでいた。
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