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PM9:00
そろそろ面会時間が終わる。
私はさっきまでの出来事を忘れようと働いた。
続々と患者さんのご家族も帰っていく。
そんなとき…
「すみません。木元さんいますか?」
「はい。木元さーん」
先輩の看護師に呼ばれて手を止め振り返った。
そこには空が立っている。
ここで無視したりしたら、先輩に不信感を与えてしまう。
私はあくまでも他人のフリをすることにした。
「はい。何かご用でしょうか?」
空は複雑そうな顔をしていた。
私は作り笑顔で答える。
「柚子。少し話がしたいんだけど…」
「未来ちゃんのことですか?大丈夫ですよ。心配しないで下さい」
「そうじゃなくて…」
「すみません。私もまだ仕事がありますし、そろそろ面会時間が終わりますので…それでは」
私は回りから見れば、当たり障りのない受け答えをして、仕事に戻った。
何かを言おうとしてた気がするけど、気にしないで背中を向けた。
だから、空がどんな表情をしていたのかも知らなかった。
なぜだろう
運命の悪戯ってこういうことを言うの?
昔はあんなに話をして、お互いが不可欠だと思っていたのに…
今の私は彼を拒絶している
怖い気がする
空がではなくて…
自分の心がこわい…
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