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「ご機嫌じゃん」
「うん」
友人の言葉に、にこにこと笑い乍、幸せそうにその人は相づちを打った。
「アイが嫌な事が有ったから、飲みに行こうって言ったのに。それは良いワケ?」
「いいの! あんなの、この幸せに比べればちっちゃいから」
そう言って、テンションも高く、アルコールを運んできたウエイターに礼を述べ、乾杯の音頭を取った。
「じゃあ、私の愚痴で。良い?」
「もっちろん!」
やけに明るい相手に話す気が薄れた詩恩は、人知れず溜息を吐いた。
「週のど真ん中に愚痴大会とか言い乍、当人はそれですか……」
「だって、あの時は心底キテたもん」
本当だろうか、と、疑ってしまう程の明るさである。
詩恩は呆れからくる気だるさから目を細め、グラスの結露を指で辿った。白い中にクリアな部分が顔を覗かせる。
「もー。かなり愚痴る気無くすぅ。今日はアイの奢りじゃないと、やってられないよ」
それに短い声を上げたのはアイである。
「だめだめだめだめ! 給料前だから、お金無いもん」
「同じ会社なんだから、私も同じだって。でも、あんたの幸せなノロケに付き合うなら話が違うもん」
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