再会

3/5
前へ
/133ページ
次へ
 そう言う詩恩に、仕方ないなぁ、と、渋々アイは交渉をし始めた。  今日奢るのはかなり痛い。 「じゃあ、私が千円分多く払うから許してっ」  そう言い、顔の前で手を合わせた。  それに、私は神仏ではない、とアイの手を軽く叩いた詩恩である。 「判ったぁ」 「ありがとっ!」  そう言ったかと思うと、嬉しそうにグラスを一気に空けたアイである。詩恩はやはり、軽い溜息を吐かざるを得なかった。  一度酔いが回ってくると、案外と口は冗舌になるものである。アイは知らずのうちに、落ち込んだ経緯を話しだした。 「有り得ないでしょ?17の時から付き合いだしたのに、結婚は出来ないなんて。五年付き合ったのは何だって!」  一度思いを吐き出すと止まらなくなり、アイは怒りを表にし、時に哀しげに話した。 「そうかそうか。アイも辛かったね。今日は全部吐き出しな」  友人はアイに、アイのグラスを差し出してそう言った。 「結婚が人生じゃ無いけどさ、私とは暮らせる自信が無いだって。意味判んない」 「ってかさぁ、なんでそんな話になった訳?」  それはね、と言い、アイは深く呼吸をし、受け取ったアルコールを飲み干した。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加