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そう言う詩恩に、仕方ないなぁ、と、渋々アイは交渉をし始めた。
今日奢るのはかなり痛い。
「じゃあ、私が千円分多く払うから許してっ」
そう言い、顔の前で手を合わせた。
それに、私は神仏ではない、とアイの手を軽く叩いた詩恩である。
「判ったぁ」
「ありがとっ!」
そう言ったかと思うと、嬉しそうにグラスを一気に空けたアイである。詩恩はやはり、軽い溜息を吐かざるを得なかった。
一度酔いが回ってくると、案外と口は冗舌になるものである。アイは知らずのうちに、落ち込んだ経緯を話しだした。
「有り得ないでしょ?17の時から付き合いだしたのに、結婚は出来ないなんて。五年付き合ったのは何だって!」
一度思いを吐き出すと止まらなくなり、アイは怒りを表にし、時に哀しげに話した。
「そうかそうか。アイも辛かったね。今日は全部吐き出しな」
友人はアイに、アイのグラスを差し出してそう言った。
「結婚が人生じゃ無いけどさ、私とは暮らせる自信が無いだって。意味判んない」
「ってかさぁ、なんでそんな話になった訳?」
それはね、と言い、アイは深く呼吸をし、受け取ったアルコールを飲み干した。
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