50人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヤツも私も働いてるし、同棲したいな、て言ったんだ。そしたら、そんな話に……。誰もさ、今すぐ結婚してくれなんて言ってないじゃん。それから考える事だって出来るワケだしさぁ」
アイは淋しげに下を向いた。きっと新しい生活をあれやこれやと想像していたのだろう。
「ふぅ~ん。で?なんでそんなに酷い事が有ったのに、そんなにもご機嫌になったワケ?」
会社を早退する程落ち込んでいたのに。
すると、それ迄落ち込んでいたアイがお酒で赤らめた顔を上げ、嬉しそうに笑んだ。
「王子に再会~」
「はぁ?」
呆れ顔で言う友人に構わず、アイは然も幸せそうに話しだした。
「私が小学校の時さぁ、転校生が居たんだ。その子と凄い仲良くってさぁ」
「んで?」
冷めた目で見る詩恩に気付いているのかいないのか、遠慮無く、それでね、と、先を続けた。
「お兄ちゃんが居たんだよ。優しいお兄ちゃんでさー。友達とも仲が良かったからさ、よく家に泊りに行ったり来たりしていたんだ。でさぁ~、いつもみたいに泊りに行ったとき、遊びに来てたのが王子」
「恋心?」
それに、そう、と声高く速答した。
最初のコメントを投稿しよう!