あどけない少女は鉄砲百合の如く

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悲しみに歪んでるはずの日本に降り注ぐ柔らかい朝日。 風に靡く薄いベールのような日差しが雲の谷間から、下ろされてゆらゆらと揺れ動く。 「竜司~、早く~」 普段通りの幼なじみの声が玄関から届き、神山 竜司はリビングのソファーから、テレビを消しながら立ち上がった。 「ったく、そっちが予定より早く来たのに急かすなよ……」 そうぼやきながら玄関へ向かう。 竜司は高校2年生、背は高めで、容姿はなかなかという言葉が相応しいくらい良い。 かっこつけすぎない程度に立たせた真っ黒な髪。 誠実そうで接しやすそうな印象を受ける風貌をしている。 キリッとした表情も優しそうな笑顔も似合いそうだ。 「おう、少し早いんじゃねぇか? 瑠衣」 同じ高校に通う幼なじみの姫森 瑠衣(ひめもり るい)に竜司は片手を上げて軽く挨拶する。 背は普通で美人というより可愛いといった感じの優れた容姿。 淡く茶色くて軽くウェーブがかったショートヘアーで少し控えめな雰囲気を漂わせている。 「……だってさ、竜司まで消えちゃったら私…流石に泣いちゃうよ」 軽く冗談っぽく言ったのだが、本人は心底本音で言ったのである。 次々と人々が消えるニュースを聞いて、毎日不安を募らせていたのだ。 「まぁ、腐れ縁だしな。俺もお前が消えたらちょっとは涙を流してやるよ」 からかうような言葉を小さな笑みと共に放ち、瑠衣の額を指で小突いた。 「ちょっと! 何それ!?」 頬を膨らませるというベタな怒り方をして、竜司の肩をバシッと叩く。 「ふははは、ほら早く行こうぜ」 「も~」 2人は如何にも幼なじみっぽい絡みをして家を出る。 鳥達の平和な声が2人を迎えてくれて、異様に澄んだ柔らかい朝日が朝の何とも言えない脱力感を解すように体に浸透してくれた。
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