SCENE.1

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「貴方はあの東雲さんですよね?実は依頼したいことがあるんです」 そうですがどのようなことですかと穏やかに尋ねながらも心の内ではやはりかと一人ごち、久しぶりに昔のことを思い出していた。 ―――――――― 私の家はお世辞にも裕福とはいえなかった。それと言うのも私が幼い頃に、父が通り魔によって殺されたからだ。父は、それほど大きくはないがそこそこに有名な会社に勤めていて、そして母は病気がちということもあって働かずに専業主婦をしていた。当時まだ中学生であった私は、学校を中退し働くことにした。当然母からは断固反対され、中学校に復学するように言われた。だが私は知っていた。私が中学を卒業する前に父が遺した遺産や母の貯金が尽きてしまうだろうということが。だから私は担任に家の事情を話し、また自分が中学を辞め働くことも話した。(担任は父とは昔からの友達であったということから私とも知り合いであり、そのため仲がよかったからだ)その際に自分が学校に来ているというように口裏を合わせてもらうように頼み込んだ。これがよかったのかいつしか先生方全員がこれに参加し、辻褄を合わせるように努力した。この結果母には多分にバレていない。そんなことがあり、私は幾つもバイトを掛け持ちした。例えばガードマンをしたり、コンビニの店員をしたり、ポケットティッシュを配ったり―――と様々に。その結果私はマルチに(言い換えれば器用貧乏に)物事をこなせるようになった。今では自分で事務所を作り、カウンセラー(のようなもの)をしているのだが、専ら便利屋扱いされてしまっている。そのため安定して収入が手に入らないので何も無いときにはバイトをしているのだ ―――――――
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