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「――――ということなんですが大丈夫ですか?」
「えと、すいませんもう1度仰って戴けませんか?」
ついつい私は思考の海に飲まれてしまって依頼人の話を聞いていなかったようだ。このような職業柄?(職業柄などとは言えないと思うのだが一応はそういうことにしておく)事態をきっちり把握していなければ依頼人を満足させるような結果をあげることはできない。やはり情報は大事なのだ
――――――
「私がお願いしたいのはウサギを探してもらうことです」
大まかなにいうとこれだけ。詳細はというと、
「実は私の友達には放浪癖があって聖クリストファーネイビスという島?というか国?というか。そこに出かけて行っちゃったんです。そこで友達が飼っているウサギを、帰ってくるまでの間に私に面倒を見てほしいと頼まれたんです。本当は断りたかったんですけど私って人に頼まれると断れないんですよ。そういうわけで面倒を見ていたんですが、部屋を換気するためについさっき窓を開けたらそこから出て行っちゃったんです。それでその友達はあと3日、4日ほどで帰ってくるらしいんです。だからそれまでにウサギを見つけ出してほしいんです。お願いします」
とまあこんなところである。ウサギの面倒を見ることを頼まれた彼女――小鳥遊美月(たかなしみつき)さんにとっては窓を開けた瞬間にウサギが逃げ出すなど、正に晴天の霹靂であったろう。
さて依頼を受けた以上はこの数日の間にこのウサギを見つけ出さなくてはならない。小鳥遊さんの話によるとこのウサギの名前はチロルというようだ。なんだかチョコレートのような名前だ。こんな名前をつけるのだからチロルは黒いウサギなのかと思ったが、小鳥遊さんから頂いた写真を見るとそんな考えは吹き飛んだ。その姿は全くの白。雪が降っている時に外に出したら人目で雪とウサギの違いが分からなくなるのではないかというほどだ。こんなウサギにチロルと名付けた理由を聞いてみたいものだと多少思った
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