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目の前まで来ると隠していたものを私に差し出してきた。いきなりの展開に呆然としてしまった私はあの、これは?と返すだけで精一杯だ。少し考えればわるだろうと思うかもしれないが、状況整理がつかず思考が追い付かないと普通は何もできなくなってしまうものなのだ。だから不測の事態が起こってしまうと何もできない人がでてくるのだ。
「昨日の残り物ですけど東雲さんのためにタッパーにご飯詰めてきたんです。」
布の中には確かにタッパーがある。それは2つあり、1つは真っ白のご飯が炊きたてを思わせるほどにツヤが出ている。もう1つのにはみずみずしいミニトマトとシャキシャキのレタス、細くカットされたスティックの胡瓜と人参、定番の玉子焼きとウィンナー、綺麗に揚げられた唐揚げといった見た目にも栄養バランスにも気を使ったラインナップとなっている。正直これが昨日の残り物であるはすがないということだけは理解できた。きっとここに来る前にわざわざ作ってきたのだろう。
「これを私のために?」
小遊鳥さんはそうです、といってまたも屈託なく笑った。小遊鳥さんには笑顔が本当に似合うと密かに思った。
「だけど何故?」
自分でも無粋な質問だと思うが小遊鳥さんの意図が全く以てわからないのだ。
「だって東雲さんは私の依頼のために頑張ってくれてるじゃないですか。だからそのための、私から東雲さんへのお礼だと思ってください」
「ですがまだ依頼を達成したわけではないですし、それに依頼が成功したら小遊鳥さんから報酬を受けとることになっていますから。こんなことされなくてもよかったのに」
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