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夢をみた。
自分が、崖から落ちる夢を。
昨日も一昨日もみた。
朝には、うなり声をあげながら起きるのだと、寄ってきてくれた友から聞いた。
理由は何故だろうかと、考えて考えた。
一つしかなかった。
自分は元々あの名門の袁家の出であった。
しかし兄の袁紹に無実の罪で謀られ、こうして何とか逃げ延びたのであった。
今は、小さな床にいる自分。
袁家の出の自分が、このまま終わってしまうのか。
世は乱れていると言うのに、本当にいいのか安直。
…いや、袁直よ。
ずっと、このような問いを自分に対しし続けているが、問いはいつもの如く、返ってはこない。
どうしたんだ、との声が聞こえた。
いつの間にか、声を出していたようだ。
入ってもいいかとの声がした。
「良いに決まっているだろう、入ってくれ。」
安直は言った。
そこには、恩師、いや友がいた。
「忘れてはいなかったか。
わたしのことを。」
忘れるはずがない。
兄の袁紹に謀られた時に、脱出の手助けをしてくれたのが、この田豊だからだ。
年は田豊の方が二個程上だが、お互い唯一心をかよわせられる程の友となった。
田豊自身仕えた主君を間違えたと想いだした頃にこのような事が起こったので、何も心配は要らないといってくれた。
しかし良かったのか、との想いはまだ自分にはある。
「忘れるはずが無いではないか。
恩師田豊よ。」
「いやはや、そう言わないでくれますか。無性に歯痒くて歯痒くて。」
本当に痒そうに言ったので、話を変えた。
「してこんな場所にきた理由とは、何かあったんでしょうか」
さらに何かを隠しているな。
そう思ってもいた。
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