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「ああそうだ忘れていた。
実はな…いや実はですね。
今こそ、今こそ袁家の出として立ってみませんか。」
頭の天辺から氷柱に、垂直に突き刺されたかのような気分となった。
今こそ、その時期だろう。そう自分でも思ってはいたものの、何も動けなかった。
動かなかったのだ。
今田豊殿に言われたのは意外、いやわかっていたのかも知れない。
動きたくても、動けない理由があった事を知っている田豊殿には。
私の気持ちが。
理由とは正に兄、袁紹だ。
いや、陰で働いていた袁術のせいかもしれんが。だがもうそんな事はどうでもいい。
そう田豊に言われても、まだ考えはつかなかった。
もし立ち上がったとしてもあの憎き袁紹、袁術が何もしてこないことは無きことだからだ。
迷った、しかし袁紹の元で知を働かして上に上がっていた田豊の事だ。
何かしらの対策はあるだろう。
自分も少しずつ少しずつでは有るが志を村の者達に伝えている。
それに同意してくれた者は少なく無い。
今挙兵すれば多くて200人少なくて50人は共に来てくれるだろうが、しかしそれではなんとも少なすぎる。
袁家の名を出せばそれなりの数は集まろうが、そんな名声で集まろう者は余程の者で無い限り使えぬであろう。
さらに本当にその出なのかなど誰にも分からないし、集まったとしても兵を養える銀も糧も無い。そう思っては思っては立ち上がれずに居たのだ。そしてこの汝南では、統治者は居ないものの、盗賊、山賊紛いの者がこの町を取り仕切っている。
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