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そう1人呟くと…いや、呟きをウサギさんに聞かれてしまった。
「どうした?悩み事か、俺でよければ聞いてやるが」
仕事が一段楽したのか、コーヒーをカップに注ぎに来たウサギさんが言う
「あ…別にいいよ、しょーもないことだし、」
とっさに言ってしまったけれど実はしょうがないことじゃない、俺的には結構重要な事だし。
けど、ウサギさんに聞かれてしまったら俺の苦労が水の泡になるしなぁ、
「…そうか、」
ウサギさんはほんのちょっとだけ悲しそうな目をして俺の頭をわしゃわしゃと大きな手で荒くなでて
「あんまり、深く考えすぎるなよ」
とだけ言って自室へと戻った。
その瞬間、これならウサギさんが喜んでくれるんじゃないんじゃないかな、という提案が浮かんだのでそれを実行する事にした。
***
そして、いよいよアノ日がやってきた。
今日のウサギさんの予定は朝から出版社に行って新しい本の会議だという、
いつもは自宅で行う会議だけど、「ついでに原稿も持っていく」ということで丸川書店まで足を運ぶ事にしいたらしい。(本当に、自由気ままだなぁ…)
俺は、その日の大学は休んで(当然、バイトも休んだ)ウサギさんをお祝いする準備に1日を徹そうと思っていた。
「じゃあ、今日は出版社に行って来るから」
「うん、あの…ウサギさん。」
「なんだ?」
「早く…帰ってきてね、」
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