プロローグ

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「ハァ……ハァ……」 息を切らし森の中を駆け抜ける人影が一つあった。 その人影、よく見れば黒髪に黒い瞳の少年のようだ。背中には漆黒の剣を背負っている。 後ろから聞こえてくる複数の罵声や足音から考えると、どうやらこの少年は追われているらしい。 「ちっ……くそったれが……」 少年は何度も地中から這いだしてきている木の根っこに躓くが、後ろを振り返ることなく走りつづける。 ただひたすらに、彼らから逃げるために―― 「馬鹿め! そっちは行き止まりだっ!!」 しかし、運命というのは時に残酷であり非情である生き物だ。 森を抜けた少年の前に広がっていたのは、逃げ道などではなかった。 それは、全てを吸い込んでしまいそうなほど深い崖だったのだ。 遙か下では大河が流れているようだが、それさえも細く見えてしまう。 「やっと追いつめたぞ……。さぁ、その剣を我々に譲ってもらおうか?」 その声に少年が振り返ると、銀の鎧を着た兵士達が少年を取り囲むようにして立っていた。
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