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「……なぜ、お前達はこの剣にそんなに執着するんだ?」
少年がそう尋ねると、赤い鎧を着た隊長格の男が一歩前に出てきた。
そして、両手を広げると空を仰ぎ、心から嬉しそうに語り始める。
「冥土の土産に教えてやろう……我々は待っていたのだよ! 我々の目的に必要不可欠なその魔剣を!」
「目的……?」
少年は眉をぴくりと動かすと背中の剣に手をやり、それを引き抜いて隊長格の男へと構えた。
しかし、隊長格の男は特に慌てる様子もなく嬉々として腰から剣を抜き、その剣先を少年へ向ける。
「この世界に散らばった魔剣を三つ集めることによって、降臨すると言われている魔王を呼びだし、その力を借りて我々はこの世界の神となるのだ!」
そういって熱弁する男だったが、少年の体に変化が起きていることに気づき目を見開いた。
なぜならば黒く染まっていた髪は蒼に変わり、同じように黒かった瞳が金へと色を変えていたからだ。
「魔剣は主を選ぶ……、お前達ごときに扱える代物ではない。さぁ、死にたい奴から前に出ろ」
……見た目だけではない。
まるで、少年の周りを見えない何かが覆っていたのではと錯覚してしまうほどに、少年からは底知れぬ殺気が放たれていた。
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