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いつもの喫茶店で、いつもの席で、いつものリンゴジュースのストローを口に銜えて、僕はぼんやりと店の窓から外を眺めていた。
テーブルをはさんで向かいのイスには、いつものように拓哉がアイスコーヒーを飲んでいる。
あんなに子供っぽい拓哉がアイスコーヒーで、僕がリンゴジュースなのが意外だとたまに言われるけど、僕もアイスコーヒーは好きだし、拓哉もリンゴジュースが好きだ。
要するに、好きな飲み物に意外も何もないということだと、僕は思う。
そんなことをちらりと思いながら、窓の外から空を眺める。
日が暮れてきたのか、わずかにオレンジ色に染まってきている。
オレンジ色の空の方が比較的人気があるけど、僕はすっきりとした青い空が好きだ。
「ねぇねぇ、陽輝~?」
気まずくない沈黙を、静かに拓哉の声が破った。先ほどの公園の時とは違った声だ。
僕は無視なんかせずに、口からストローをはずしてただぽつりと呟くように返す。
「なに」
目線を窓の外から向かいの拓哉に向けると、拓哉はカランカラン、とストローでコーヒーに入っている氷をまわしている。
その様子をぼんやりと見つめて、頬杖をついてつまらなそうにカランカランと氷をまわす姿でさえ幼く見える。
「何描くかまだ決まんないのー?」
目線だけを動かして、隣の席に置いたスケッチブックの入ったカバンに目を向ける拓哉。僕もチラッと拓哉の目線を追ってみる。
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