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僕がそう言うと、拓哉は意表をつかれたように目を丸くしたかと思うと、次の瞬間にはニッと歯を見せて、あどけない笑みを浮かべた。
本当にこいつは高校生なのだろうか?
確かに去年まで中学生だったが、中学三年生もそれなりに大人なものだと僕は思っている。
「きみみたいに騒がしくてからかいのある奴、忘れるなんてあるわけないだろ? 僕の身の回りには、きみほど扱いやすくておかしい人間はいないからね」
皮肉たっぷりでそう言ってやると、そいつは眉根を寄せたが、口元は緩んでいる。
「そりゃないぜはるポンそこは親友だからなーっとか、言うものだろっ?」
にへらっと、気の抜けた笑みになってそいつは僕の肩を小突く。本当によく思うことなのだが、こいつの表情はコロコロと変わる。
こういう性格もあるし、フレンドリーというのか、友達も多いし周りからの印象もいいみたいだった。
勿論、拓哉の周りからの評価など、僕には関係ない。
「親友? そんなこと、きみが勝手に思っているだけじゃないか」
ふん、と少し顔を強張らせて言うと、そいつはまたまた照れちゃって~、などと自意識過剰なことを言っていた。
僕はそれを無視という単純方法で流して、歩みを帰り道の方向へと進めると、後ろからちょちょ、待ってって! という声が聞こえて、隣にふわっと誰かが来た感覚。
拓哉が話して、僕がてきとうに相槌を打つ。そんな会話を続けて、いつもの喫茶店、に僕らは自然と歩みを進めた。
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