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後半やけに殊勝になった彼女の言葉はこれで締められ、同時に俺の耳からイヤホンも引き抜かれる。 爆音を鳴らす必要は絶対的になかったと思うし、イヤホンから引き抜かれる直前に「うるせーぞ馬鹿!」という怒鳴り声が聞こえたので恐らくあの後何かしら叱責を受けたのだろうな、と生暖かい目で彼女を見つめる。 そんな俺の視線を真正面から受けて尚、彼女はにっこりと笑っていた。知らないって素晴らしい。 「分かった?」 こんなところで会わなければ、俺は君を好きになっていたかもしれないな……と戦場ラブロマンスでよくあるセリフが頭を駆け巡る中、俺は黙って首を振る。 「あれー?私このラジオ聞いて超テンション上がって、これは参加するっきゃない!って意気込みでここまで来たのになー」 どうやら謎のDJ“K,S”は彼女ではないらしい。ちょっとした優しさと哀れみを飲み込んで、俺は彼女の台詞を受け流す。 どこの屋上かも言ってないのにどうしてこの学校の屋上だと断言できるのか、なんてことはもちろん言わない。 俺はもう大きなお友達。小さな矛盾をつつくほど子供ではないのだ。 たとえ目の前で「おかしいなー」と首を傾げる姿にイラっときても、大きいお友達は笑ってスルーするのだ。
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