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その夢の第一歩がこれなんだ、と彼女は愛おしそうに自分のギターに視線を投げる。
少しだけ古ぼけた印象を受けるそのアコースティックギターは、それゆえに大切にされてきたのが分かるほどに手入れが行き届いていた。
きっと、彼女が頑張ろうと決めたその日から手入れを欠かしていないのだろう。
自分の楽器に対する愛情を彼女から感じる事ができ、俺は少しだけ親近感を持つ事ができた。
どんな人間であれ、楽器を大切に出来るやつに悪い人はいないのだ。
「なんかないかなーって家の中探したらコレがあってさー。父さんったらご大層に部屋に飾ってんの」
「自分のじゃないのかよ!?」
爺ちゃんの習字道具じゃあるまいし(それでも無断は駄目だが)、使うから貸して、で済むものじゃない。つーか、手入れしてたの親父さんかよ。
よくよく考えてみると、彼女のギターはお世辞にも上手いとは言いがたかったし、動機についても実に最近のニュースが盛り込まれていた。
要するに「勢いで始めた、反省はしていない」というやつなのだろう。
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