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上半身だけがフェンスから伸び、その身体はフェンスの網目に突き刺さった両足で固定されている、大人がこの場にいれば間違いなく引きずり下ろされるであろう位置。 つまり、落下する可能性が十二分にある位置。 その位置で、その状態で、それでも彼女は止まらない。 「はーーーーーーっはっはっは!!」 顔はブレない、下を、足のかかり具合を確認しようともしない。 ただ大声で笑う。その髪も心底おかしそうに大空に舞う。 名前も知らない女のステージが幕を開け、俺にとっての入学式は前座に成り下がる。 知らず足は前へ。 彼女を見上げる新入生(かんきゃく)が見たくて。 初めに気づいたのは数人。「何だあれ?」「誰?先輩?」数人の声が波紋となり、広がったざわめきは彼女にとって最高の喝采となる。 「白土西高校へ入学おめでとうお前ら!!挨拶代わりに聞いていけ!!」 彼女の指がギターを呼ぶ。ややぎこちないリズムが観客に向かって伸びていく。 決して上手くはない、ややリズムがズレた音色。
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