彼女の歌がこだまする

一

やった、ついにやってやった。

ついにこの俺、支倉太一は学校行事を堂々とサボってやったぜ……！！

小さくガッツポーズを決め、勝利の余韻に浸る。

ありがとう相沢。お前の言うとおり高い所は最高だったよ。おかげで素晴らしいスタートを切れた。こうした行動を積み重ねて、俺は高校生活をとことん適当に過ごすのだ。

髪だって坊ちゃん刈りから短くサッパリとさせ、ジェルまでつけてもらった。ほのかに香るミントが絶妙な背徳感を演出している。ちなみに整髪料をつけるのは立派な校則違反だ。入学パンフレットに書いてあったから間違いない。更に行事サボリのWパンチ、ここまでデッドラインをひた走っている自分自身の成長ぶりが恐いほどだ。

もう学級委員だって生徒会だってやらない、成績なんてどうだっていい。
　日の当たる学生生活はおしまい。これからは誰からも疎まれる“ちょい悪生徒”として高校生活を闊歩するのだ。

落下防止のために張り巡らされたフェンスに歩み寄り、温暖化の影響かすでに花びらが散り始めている桜をぼんやりと見つめる。