4/27
前へ
/49ページ
次へ
体育館では校歌斉唱が始まったらしい。 微かにピアノの音が聴こえてくる。次いでギター、前奏が終われば教師一同と若干名の善良な生徒の歌声が聴こえてくるだろう。 中学校までは俺もその中の一人だったのだが。 「にしても、ギター下手糞だな……」 俺にだって心得があるわけじゃない。じゃないが、それにしたってギターの音は酷い。ピアノとのリズムは見事なまでにずれ、1テンポ遅れていると気づけば大忙しでピアノを追い抜いていく。そんな自由な演奏にも関わらず、音色はピアノよりもハッキリと耳に入るのだからタチが悪い。 「歌いにくいだろうなー、皆。むしろギターいらないだろ」 ちょっと頭が良ければ途中で自分の合ってなさに気づいて演奏を止めようとするだろう。つまりそれを自覚できないほどに腕の無い奴が今ギターを弾いているのだ。とんだ恥知らずだな、顔見とけば良かった。と一人笑いながら後悔している最中。 「しょうがないでしょー、まだ覚えたばっかりなんだから。初めは皆素人だった、ってどこぞのCMでも言ってるじゃないか。あー指痛」 ――屋上にいるはずなのに、上から声が降ってきた。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加