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その細やかな気遣いが弁慶は嬉しくもあり、煩わしくもあった。
それは彼等には主が居なかったから―。
だから自分の今の気持ちが理解出来ないと思い、距離を置いていた。
あの頃を思い出すと胸が痛む。
そして今現在、彼等は弁慶と同じマスターの花となっている。
花にとって優先すべきはマスターのみ―。
仲間とはいえ同族を気遣う者等ほとんどいない。
だが彼等は――。
昔と全く変わらない2人に弁慶の心の奥に封じ込めた懐かしい感情が蘇る。
「貴方達は変わらないんですね。」
「何がだ?」
訳が解らず義経が訝しむと弁慶は自嘲気味な笑みを浮かべた。
「あの頃の君達は主が居なかった。だから世話焼きの君達は僕を気にかけ構っていました。
…でも今の君達にはマスターがいる。何故未だに僕に構うんですか。」
正直ほっといてほしかった。
だって今の自分は普段通りに彼等と接する余裕がないからだ。
だがその台詞は義経達に主が居なかった頃、よく弁慶が吐いた言ノ葉…。
その事に2人は気付き歳三はクスリと笑う。
「お前も変わってない。」
「何を…。」
「お前はいつも相手と距離をおき、1人で苦しむ。」
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