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そして少女が樹の根に足を躓かせて動きが止まったその一瞬を突き、グランは見事彼女の手首をキャプチャーすることに成功したのだった。
「ちょっと待ちなって!そこから先は行ったらダメなんだよ!!」
「離して!離してください!!私は里を破壊したあなた達に協力するつもりは一切ありません!!」
言っている意味自体よくわからないのだが、ひどく少女は錯乱してこちらの言葉にも耳を貸さずになおも逃げようと掴まれた手を振り払おうとする。
しかし、手を離してしまった時点で少女の運命がバッドエンドを迎えることになってしまうため、グランも相手が可憐な美少女ということで多少遠慮しながらとにかく彼女を崖から引き離そうと引っ張り続けていた。
そんな微妙な均衡を保つ終わりなき互角な押し合いへし合いが続き、そろそろ二人の体力が限界へと近付き始めた頃、その事件は突如として引き起こされてしまった。
この辺り一帯は枝が高く日の光が地面にまで届かないため地面は先日の雨で湿った落ち葉によって敷き詰められ、少なくともバナナの皮よりはよく滑るブービーなトラップと化していた。
ブーツの滑り止めの効果はほとんど意味を為さず、少女は不覚にも一際落ち葉の積もった箇所に足を踏み入れてしまった。
「きゃ……っ」
「あっ、危ないっ」
案の定、仰向けになるような形で転びそうになる少女を助け出そうとグランはとっさに手を伸ばすも、うっかり自分まで一歩踏み込んだ際に落ち葉で足を滑らせてしまった。
落ち葉が舞い上がり、折り重なるように倒れた二人の若者へ降り注いだ。
「う、うう……うん?」
少しは痛みがあるものかと思いきや、何か良い匂いのするクッションのようなものが頭を受け止めてくれたおかげでなんとか何事もなく済んだらしい。
とりあえずよいしょと体を起こすグランの両手に伝わってきたのは、冷たく湿った地面の感触ではなく、もっと柔らかくて温かい何か。
指先を確かめるように動かすとムニムニと心地良い弾力を返してきながらそれに合わせて形を変え、手の中に収まりきらないほどに大きい。
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