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『智也!待ってよー』
『遅いぞ~?』
桜が舞う季節。
私、藤井葉月と
彼、藤井智也は
半年前に付き合い始めた。
『智也が早すぎるんだって…』
『葉月が遅いんだろ?
この桜を見たいって言ったのはお前じゃねぇか』
『そうだけどさぁ~…』
――半年前、
智也の方から告白してきた。
入学式の時にすでに智也に好意を抱いていた私にとって信じられない出来事。
『ほら、着いたぞ』
『はぁ…はぁ…
な、何で智也はそんなに平気な顔してるのー…
信じられない…』
『お前とは鍛え方が違うからな』
『何それー』
『あははっ』
―――でも、智也は浮気性だった。
私と付き合ってからも、たくさんの女の子と関係を持っていた。
初めは信じられなかったけど…
それは確かな事実で。
『んで?
この桜の下で何がしたかったんだよ?』
『写真!
一緒に写真撮ろ?』
『は?また?
昨日も撮ったばっかりじゃん』
『いいじゃん!
智也のとの思い出をたくさん写しておきたいの』
―――でも、私は信じた。
一度は別れるって決めた事もあったけど…
彼の浮気が私を本当に想っているからこそ、なのを知ってしまったから。
だから私達は再び付き合い始めて…‥
『はぁ…葉月は写真が好きだな』
『…智也の方が好きだよ?』
『は?!
な、何言っ……――』
『クスクス…顔が真っ赤ー』
『か~ら~か~う~な~!』
『あははっごめんてー』
それからは、たくさんたくさん写真を撮った。
でも何故だろう…
私は写真が好きな訳じゃない。
ただ…私達の結末を、予知していたみたいに…
『あ!あそこの桜の下でも写真撮ろ?』
『は?またかよ…
しゃあねぇなぁ~』
――――私は写真を撮り続けた…
思い出を残すように。
智也を…忘れないように…―――――。
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