~第一話~

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かつん、智也は立ち止まり… 俯く私の顔を両手で包み込んだ。 『…どうした? 何でも聞いてやるから… 話してみ?』 『………ん…』 ―――智也は優しい。 いや…優しくなった。 一度別れてから、私の大切さを改め感じたらしくて… それからは本当に私だけを見てくれる。 私を気遣ってくれる。 『どうした…?』 智也の大きな手… それに包まれてるだけで、安心する… 『…智也はさ、本当に私でいいの…?』 『…………は?』 結構勇気を出して言ったつもりだったんだけど… 智也からは、不思議でたまらないといった視線しか返って来なくて。 『…いや、だからさ… 私が彼女でいいのかなって…』 伝わってないらしいから、もう一度問い掛けたら… ぱしん、軽く頭を叩かれた。 『痛っ… 何で叩くのー?』 叩かれた箇所に手を置いて私は頬を膨らませた。 『お前が馬鹿だから』 『へ?』 智也はそう吐き捨て、 すたすたと先に歩いて行ってしまう。
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