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ガチャ、とドアノブを捻り、颯はまだ荷物が片隅に残る自分の部屋へ足を踏み入れた。
寮は、一応二人部屋なのだが、颯は余りということで一人なのだった。
颯の家は、ここ日本でなく、ドイツにあるのだ。
しかし海鳴のいるこの日本に来て、この高校に通うことになったのだ。
あの使命を背負ってから。
「上谷ー」
ドンドンとドアを叩く音と、ピンポンとベルを鳴らす音が響く。同時に音を立てなくていいのに。
「立石」
声の主は隣の部屋の立石佑稀だった。佑稀の隣には彼の同室の渋谷新も立っている。
「晩メシ食いに行かね?」
立石は明るい。渋谷も明るく、よく二人、いや大勢で騒いでいる。
だから何故自分にいつも声を掛けるのかが判らないのだ。
自分は、一人でしか基本居たくないのだが、一人で居ると寂しいだろうと思うのか雛崎が近付いてくる。
なので一緒にいることも最近多くなった。
「もうコンビニとか行ってきたなら持って来いよ、な?」
「コンビニ?行ってないけど」
「え、お前コンビニ行ったんじゃねーの?なぁ渋谷」
「おぅ。だってオレ聞いたし。」
「誰に?」
「暁に」
…オッサンかよ。
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