0人が本棚に入れています
本棚に追加
──疲れた。
小夜も颯と同じく、群れるのは本気で嫌いだ。
だが、颯ほど馬鹿ではないので、こうやって愛想よく付き合ってやってるのだ。
勿論一緒に居て少しは楽しいと思う他人もいるが、それも別に無くて構わないものだと考えている。
しかし、他人は自分に口答えの少なく、
且つ笑顔で頷いてくれる相手を探している為、小夜に集まってくるのだ。
「──…さて、と」
海鳴が持たせた財布の中身で切符を買い、小夜はとある人物の元へ急いだ。
少し郊外に進んだ頃に電車を降り、赤い煉瓦の妙に目立つ洋館。
──『白桝、黒澄』
扉の上から垂れ下がる紐を引くと、扉の奥に響く鐘の音が聞き取れた。
「小夜?」
顔を出した相手、黒髪の少年は、小夜を見ると少し驚いた顔をする。
「おかえり」
しかし、直ぐ淡い笑顔になり、小夜を扉の奥へと招き入れた。
「どうかした?」
「ん…ちょっと」
「そう」
白桝乃鴉は、そう深く追及せず、台所へ入っていった。
「乃鴉、僕客じゃないから」
「そう、だね」
お茶を煎れようとした乃鴉にストップをかけ、小夜は椅子に座った。
最初のコメントを投稿しよう!