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「溜め息を吐くと幸せが逃げていくんだぞ」
「…」
呑気に現れた一つの姿に、三人の沈黙が重なる。
「?しらけたか」
「…オッサン、何か言うことあんだろ」
低めの声で恨みの籠った颯を笑顔でスルーして、暁海鳴は土管の中に入り込み、顔だけをこちらに出す。
「…踏みつけるよ、暁センセ」
「うーん、それもいいけど…」
「いいんだ…」
海鳴の言葉に颯と小夜が呆れかえったが、海鳴はいきなり土管から飛び出すと、小さな声で宣言した。
「さぁ、お仕事だ諸君!」
もう三人が想定内の事だったため、全員の表情は変わらず、只沈黙が流れ、海鳴を急かした。
「えーとだな、…てもう暗いな」
「…オッサンのせいだろ」
颯の文句をまたスルーして、海鳴は颯の鞄を奪い取った。
「颯、お前ら寮戻らなきゃ寮長煩いんだろ?」
「…げっ」
「小夜向かわすから、戻れ。な?」
どうも腑に落ちないが、寮長が煩いのは確かなので、颯は渋々海鳴から鞄を取り返した。
「海鳴…何で僕が」
「じゃ、小夜宜しく」
ヒラと手を振って颯が自転車で公園を去っていく。
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