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その日の夜、博麗神社の中の一室で浴衣姿の鬼二人は寝付けずにいた。
「外の『奴等』が五月蝿いな」
主人が鬱陶しそうに言うので布団の中から「排除しますか?」と問うが。
「よい。無駄な殺生が良くない事位私にも分かる。私が我慢して眠ればいいだけだ。お休み八尋」
そう言い幼い小鬼は何も文句を言わなくなった。その様子を見て部屋の角に“現れた”萃香は静かに微笑む。
「萃香様と遊びになられていた時より、良い方になられたでしょう?」
「そうだね。……“あんな父親”だから、きっと良い子になるって思っていたけどね」
そう言うと萃香は霧になって部屋から消えた。
「……あんな父親、ね……」
鬼の世界から逃げ出す前に会ってきた千年の父親、虎熊童子の顔を思い出し拳を強く握り、目は怒りに煮えたぎる。
その日、八尋は一睡もしなかった。
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